Web3.0が世界で求められる必然性

POINT ここではWeb3.0業界の構造について解説します。
 前記事では、Web3.0業界の基盤技術であるブロックチェーン技術と、業界を取り巻く情勢、デジタルゴールドとして世界的に認められつつあるビットコインについて解説しました。

 ブロックチェーン市場の市場規模は2兆ドルを超え、大きなムーブメントになっており、それを牽引してきたのがビットコインです。ビットコインが既存市場から奪い取った2兆ドルの半分がブロックチェーン技術を組み込んだ新しいサービスに再投資される流れになっています。そして、その流れは「Web3.0」という名称でリブランディングされ、大きなうねりとなり、莫大な資産と人材がこのWeb3.0業界に流れ込んでいるのが現在の潮流です。ここでは下図をもとに解説しているので、念頭に置いておいてください。各レイヤー(領域)の詳細については次章以降で説明しますが、ここではWeb3.0が世界で求められる理由について解説していきます。
 

1.Web3.0の現在地

インターネット利用者数と暗号資産保有者数の比較
 まずは数字で見てみましょう。現在のWeb3.0人口は、暗号資産の保有者などから推測すると1.2億人程度です。この人口をインターネット利用者数と比較すると、ちょうど1998~2000年頃のインターネット利用者数に相当します。下図はインターネット利用者数と暗号資産保有者数の人口の比較です。1998年でいうと、おおよそAppleが最初のiMacを完成させたタイミングであり、Web3.0がまだ一般層から遠い存在であることがわかります。
出典: International Telecommunication Union, Our World in Data, Crypto.com,
Statista, Bloomberg, and Wells Fargo Investment Institute.
 
インターネットからWeb3.0へのリソースの流入
 インターネットとスマートフォンの2つのテクノロジーが一般層へ広まったスピードを考えると、テクノロジーが一般層に実感値を伴って浸透するのは、ユーザー数が10億人を突破してからという分析があります。現在のインターネット利用者数と比較すると、Web3.0業界の規模感は10分の1程度ですが、逆に見れば「これから10倍に伸びる可能性がある」と捉えることもできます。
 米国のニューヨークタイムズでは、米国の優秀な人材が「Web3.0は人生に一度のチャンス」と見定め、グーグル、アマゾン、メタなどの巨大企業からWeb3.0業界に流れていると報じています。なぜWeb3.0業界にこれほどのリソースが集まっているのでしょうか。この理由について、これまでインターネットに関わってきた人々がWeb2.0をWeb3.0に進化させようとするIT業界の「内側」からの圧力と、IT業界の外側の誰もが賛成するような社会正義を求める「外側」からの圧力、という2つの観点で、Web3.0が推し進められる状況を見ていきます。
 

2.【内圧的側面】Web3.0への進化が必要なインターネット

広告モデルにおけるWeb2.0の限界
 本シリーズの冒頭で、Web3.0は「現在のインターネットを根本的につくり直し、もっと便利にしようという世界的なムーブメント」と説明しました。そして現在は、インターネットがWeb2.0からWeb3.0に変化する過度期にあたります。
 なぜ現段階でも十分便利なWeb2.0のインターネットを根本的につくり直さなければならないのでしょうか。その理由は、Web2.0のビジネスモデルが広告モデルを採用していることにあります。これがWeb2.0の限界でした。
 「広告」は「広く告げる」と書くように、より多くの人に情報を告げることに価値があります。これを採用したWeb2.0では、できるだけ多くの人をWebサービス上のコンテンツに惹きつけ、そこに留めておこうとします。これにより、人を怒らせたり炎上させたりすることを目的とした、質が低いコンテンツやフェイクニュースなどが生産されるようになり、Web2.0ではそれらが評価されるジレンマに陥ってしまいます。
 広告モデルでは「人から多くの時間を奪うほど稼げる」ので、Web2.0のサービスは人から多くの関心をひくように最適化されていきます。そして、企業はSNSなどのプラットフォームに蓄積されたデータをAIに分析させ、ユーザーが気に入りそうな情報をどんどんレコメンドするようになりました。
 
Webサービスの成長がユーザーやクリエイターへ及ぼす影響
 広告モデルを採用した中央集権型のWebサービスでは、次図のようなライフサイクルをたどります。Webサービスを立ち上げたばかりの頃はユーザー数が少ないので、企業は最初、コンテンツ提供を行うクリエイター、開発者、事業者などの協力者を集めることに全力を尽くします。ユーザー数や協力者(インフルエンサーやPR会社、LINEスタンプ作成者などの)数が増えてくると、Webサービスが普及のS字カーブを描き始め、提供するサービスの質が着実に高くなるネットワーク効果(次記事参照)が生まれます。こうなると、「あの人も使っているから」 「使っていないと不便」といった状況になり、ユーザーはそのWebサービスから抜け出すことができなくなります。
出典:石ころ、平田智基「なぜWeb3が重要なのか」(スタタイ)をもとに作成
 
 しかし、S字カーブが頂点に達すると、ネットワーク参加者との関係が、最初は協力関係であった状態から、市場を奪い合う競合関係に変わります。成長を続けるためには、ユーザーや協力者と可処分時間を奪い合い、競争する必要があるのです。有名な例としては、グーグル対イェルプ、アップル対エピックゲームズ、フェイスブック(現メタ)対ジンガなどがあります。
 これは、どのWebサービスも広告モデルを採用しているために発生する問題であり、これがWeb2.0のインターネットの限界です。たとえるなら、途中までは一緒に手を取り合ってゴールテープを切ろうと走っていた仲間が、急に順位を競い合うライバルになり、スピードを上げて走り始めるといったところでしょうか。
 ユーザーの可処分時間を奪って競合に勝つため、プラットフォーマーたちはユーザーのデータを蓄積し、そのビッグデータをAIに分析させることで、ユーザーが好むコンテンツを提供するようにシステムを最適化させていきます。より多くのデータを集めたプラットフォーマーは、より精度の高いコンテンツを提供できるようになり、そのサービスからの離脱を防ぐことができます。
 結果、これらのデータはプラットフォーマーに「独占」されています。ユーザーがデータを搾取されないままWeb2.0のサービスを利用することは不可能です。また、コンテンツデータは企業に「所有」され、コンテンツを開発したクリエイターに支払われるはずだった利益が、データを所有する企業に吸い上げられる構造になったことはWeb2.0の欠陥といえます。
 
Web3.0で生まれた「データ所有」の概念
 Web2.0では、データはユーザーのものではありません。たとえば、個人情報は「個人」の「情報」なので、ユーザーの所有物という印象を受けますが、そのデータが保存されているのはプラットフォーマーの所有するデータベースです。プラットフォーマーは、自社のデータベースに蓄積されているデータをクライアントに切り売りして収益を上げていますが、データの提供元であるユーザーには1円も入りません。これがWeb2.0の「当たり前」でした。
 Webサービスでは個人情報の入力が当たり前になっているので、問題と感じない方もいるかもしれません。ですので、ゲームの例を見てみましょう。
 「サービス終了」「サ終」という言葉にがっかりしたことのある方は多いのではないでしょうか。たとえば、ソーシャルゲームのガチャを回すと出てくるキャラクターは、自分のものと思われるかもしれませんが、データ自体は企業のデータベースに保存されており、レンタルしているようなものです。実際のデータの持ち主は企業なので、いくらお金を支払っていても時間と手間をかけていても、サービスが終了してしまえば、データや権利が消えてしまいます。しかし、ユーザーが購入したのに、企業の都合で消されてしまうのはおかしなことです。
 一方、Web3.0ではブロックチェーン技術により、ユーザーがデータを「真」に所有できます。ゲームデータはNFT(第7章参照)などでブロックチェーン上に所有者が記録され、ゲーム側がユーザーの所有データを参照してゲーム画面を変化させます。Web2.0とデータ参照の方向が異なることに注目してください。
 ユーザーが「真」にデータを所有すると、仮にサービスが終了しても、購入したデータは手元に残るようになります。企業がゲーム開発を行わなくなると、データの用途がなくなりますが、ゲームへの熱量の高いユーザーがゲーム開発を引き継ぎ、ゲームを存続させる事例も出てきています。
 ブロックチェーンが普及すれば、Web2.0で主流だった中央集権型のビジネスモデルに変革が起こります。GAFAなどのIT企業のプラットフォームや、金融、不動産、物流などを支配する巨大企業に代わる新しいサービスが登場していくことでしょう。
 
Web2.0に抑圧されたカウンターカルチャーとしてのWeb3.0
 初期のWeb1.0は、誰もが自由に利用できる、現在のWeb3.0の思想に近いインターネットの構築が期待されていました。詳しい知識を持つ人だけがやり取りをするならそれで十分だったのですが、一般層がインターネットを利用するためには、当時のインフラやWebサービスを個人で管理するという難しさがありました。この難しさは、徐々に企業によりサービス化されて便利になっていくのですが、その過程で中央集権化されていった経緯があります。
 Web1.0でユーザーのものであったデータが、Web2.0でいつの間にか企業に独占され、それがWeb3.0で解放されるのです。Web3.0は、Web2.0で企業に奪われたデータの主権を取り戻す戦いでもあります。Web2.0で奪われた権利を取り戻そうとする内圧により、Web3.0は推し進められています。
 また、この戦いに勝利することは、暗号学の40年来の歴史における悲願です。暗号化技術は1970年代後半に米国政府機関と軍によって開発され、1990年代初頭、「サイファーパンク(CypherPunk)運動」として、正式に立ち上げられました。「サイファーパンク(CypherPunk)」とは、「Cypher(暗号)」と「Punk(パンク)」を組み合わせ、SFのジャンルである「サイバーパンク(CyberPunk)」をもじった造語です。暗号学の普及とプライバシーの保護を行うための技術開発と、暗号学者やエンジニアといった活動家のことを指します。
 サイファーパンクは最初、メーリングリストから始まりました。そして、このメーリングリストの中央集権制を排除するため、「分散型の独立したメーリングリストノードのネットワーク」を構築しています。当時から「非中央集権」という哲学がコミュニティにあったと想定されます。有名なものに「サイファーパンク宣言」というものがあります。「デジタル社会におけるプライバシーや個人の権利を守るために戦う」といった内容のものです。プライバシーはデジタル社会に必要不可欠なものですが、いまだ実現されていません。現在のWeb3.0のトレンドは、サトシ・ナカモト氏がビットコインを考案し、ブロックチェーンが誕生したことで始まったように思われますが、Web3.0の源流はこのサイファーパンクにあります。
 この背景を理解していれば、Web3.0のムーブメントは「サイファーパンクがプライバシーという聖杯を取り戻す戦い」に見えてきます。Web3.0はサイファーパンクが脈々と受け継いできた思想によって実現されるのです。ここに、エンジニアなどがWeb3.0に熱狂する理由があります。そして、この戦いは現代が抱える社会正義とも符合しています。
 

3. 【外圧的側面】社会正義によって推し進められるWeb3.0

企業に求められる社会正義
 インターネットに抑圧されてきた人々がWeb3.0を推進することは当然ですが、Web3.0は一般的なユーザーの求める社会正義によっても推し進められています。
 ここ数年、持続可能性(サステナビリティ)、SDGs、ウェルビーイングなどの言葉が世の中に溢れ、利益至上主義だった資本主義経済が変わりつつあります。SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された、人権、経済、地球環境といった課題を解決し、持続可能でよりよい世界を目指すための17の目標と169のターゲットの総称です。環境(E:Environment)、社会(S:Social)、ガバナンス(G:Governance)の英語の頭文字を取った「ESG」という言葉も登場し、企業の経営や投資活動がESGに沿っているかという社会正義が問われる時代になっています。企業に求められる社会正義とは、「環境を一切破壊してはならない」といった0か1かの極論ではなく、ある人の幸福のためにほかの人の幸福が収奪されることがなく、人類全体の幸福の総量を増加させる社会システムに貢献することです。
 SDGsをはじめとする社会正義を企業に求める風潮は、Web2.0による不自由なインターネット、格差社会、監視される社会、中央集権からの抑圧、不透明な倫理観などへの反発が根底にあります。それに伴い、企業が営利活動を行ううえでの価値観も大きく変革している状況があります。例を挙げてみましょう。
 
1.過度な搾取はNG、情報の独占は最小限に
・ユーザーの可処分時間を奪い、過度な消費を促していないか
・解約率を下げるため、解約までのUI/UXを複雑で難しいものにしていないか
・売上を上げるため、必要以上の情報を取得しようとしていないか
2.環境や他人へ十分に配慮する
・人々が求める利便性を追求する裏で、環境を破壊していないか
・価格を下げる低価格戦略をとることで、誰かが犠牲になっていないか
・大量の紙を消費し、印鑑を強要する手続きにより、生産性を下げていないか
3.男女平等などを徹底し、ホワイト企業であること
・広告への注意を引くため、露出度の高い女性の写真を使う必要があるか
・公の場において、性差や性的マイノリティをちゃかす会話をしていないか
・従業員の心身の健康を重視し、時短勤務や子育て世代にも配慮しているか
 
 企業が売上を上げるため、ユーザーに過度なストレスをかけたり、環境を汚したり、従業員を働かせすぎたりすると、社会正義を盾にした「感情」が集まり、炎上することがあります。社会正義に沿うことは企業の常識となりました。
 Web2.0においては、SNSの誕生で人はつながりやすくなりましたが、つながりが「可視化」されたことで、逆に孤独も感じるようになりました。フォロワー数やSNSの「映える」投稿と、自分の現実を比較し、自分の存在が小さく思えることがあります。そのようななか、社会正義に基づいた「感情」はSNSで「共感」を生みやすいものです。感情が共感を生み、それが成功体験として蓄積されていくと、徐々に自分のアイデンティティになっていきます。
 このサイクルが行きすぎると、「謎の正義マン」が誕生します。誰かの不正を発見して正義を執行することに快楽を感じ、その対象となる人の尊厳や人間性を奪い取ることを考慮しないモンスターです。当然ですが、これは幸福の総量を増やす行為ではありません。社会正義に関わる問題は、特定の企業や人を批判することによってではなく、構造的に解決される必要があります。
 
社会課題を構造的に解決することが重要
 SDGsに掲げられている課題は「誰もが解決したほうがよい」と思えるものですが、今まで解決されなかったのはひとえに「儲からない」からです。儲からないために、課題解決の活動を持続できず、NPOが寄付金を募りながら活動するような状況になっていました。構造的な解決のためには、お金を稼ぎ、持続可能性を得る必要があります。この持続可能性はテクノロジーの発展によって実現され得るものです。テクノロジーの発展は、10分かかることを1分に短縮したり、大きいものを小型にしたりすることで、より便利かつ効率的にしていきます。効率化されれば、今までできなかったことが実現でき、収益化の可能性も高まります。Web3.0の話題になると、Web2.0は低く評価されがちですが、現在のインターネットにより持続可能な領域は飛躍的に広がりました。実際、ユーチューブやサブスタックなどのサービスを通して、個人でも多くの人に「情報」を配信してお金を稼ぐ手段が増え、価値観や働き方が多様化しています。
 Web3.0では、ビットコインをはじめとするP2P送金の技術が誕生したことで、直接的な「価値」を送り合うことができます。たとえば、「ゴミを拾ったよ」というSNS投稿があった場合、Web2.0では「いいね!」を押すだけでしたが、Web3.0では100円を送金できます。Web2.0で100円を送ろうとすると、手数料のほうが高くなって運営側が赤字になるので、実現が難しいでしょう。低コストで送金できるようになることで、今までコストが見合わずにビジネス化されていなかった領域にも持続可能性がもたらされます。
 適切にインセンティブを設計して価値を送り合う経済圏を構築することで、ゲームでお金を稼ぐ「Play to Earn(P2E/プレイトゥアーン)」と呼ばれる事例も出てきています。また、歩くことでお金を稼ぐ「Move to Earn(M2E/ムーブトゥアーン」なども登場しており、今までお金を稼げなかった行為に持続可能性をもたらす片鱗が見えてきています。現時点でも、プレイやムーブに代わるさまざまな「〇〇 トゥアーン」の開発が進んできており、SDGsの課題に持続可能性をもって解決する手段の1つとなるかもしれません。
 

4.国家から迫られる巨大企業の分解

巨大企業による独占の問題
 米国の巨大IT企業群であるGAFAは巨大になりすぎました。このような巨大なプラットフォーマーは、さまざまな場面で摩擦を生みます。有名な例では、スマートフォンのアプリストアの決済手数料の問題があります。スマホアプリ市場はアップルとグーグルに独占されているのが現状です。スマホアプリを開発してマネタイズするには、iPhoneであればアップルに、Android端末であればグーグルに決済手数料として30%を支払わなければなりません。これが高すぎるとして、アップルと戦っているのが「フォートナイト」というオンラインゲームを運営するエピックゲームズです。
 巨大なプラットフォームサービスは、ユーザーにとって「便利」で、かつ「最適化」されているので、使わざるを得ないものになっています。出店手数料を上げられたり、検索ロジックを変更されたりしても、そのサービスを利用している事業者は抵抗するすべがなく、泣く泣く応じるしかありません。そのほかにもさまざまな問題が起こっており、米国ではGAFA(ガーファ)をターゲットにした独占禁止法の改正案が可決され、巨大になりすぎたテックジャイアントの解体と、脱プラットフォーマーの流れが進んでいます。
 
国家より大きくなれない企業の限界
 以前、フェイスブック(現メタ)が「リブラ」というステーブルコインを発行しようとしたとき、世界中の反対にあい、頓挫したことがあります。その後、プロジェクト名を「Diem(ディエム)」に変えたものの、計画は完遂しませんでした。企業がステーブルコインを発行するということは、「企業が通貨発行権を持つ」ということです。
 通貨発行権は国家だけが持つ権利でした。国家はこの権利を有するがゆえに、金融政策により自国経済をコントロールできます。米国政府が関与できない通貨の流通を許すわけもなく、Libraの一件は、国家が通貨発行権を持とうとした企業をつぶした構図になります。これは国家の上にそれ以上の規模の企業が存在し得ないという、企業が構造上の限界を迎えていることの証左です。国家以上の規模に成長する企業にとって、重要なキーワードは「分散」です。データや利益を独占せず、国家に邪魔されない分散型のWeb3.0テクノロジーが必要とされます。
 SDGsの流れはボトムから、国家による企業解体の流れはトップから、企業には「分散」が迫られています。企業は今、分散型のWeb3.0テクノロジーを使って社会正義を全うする必然性を負うようになっているのです。
 

5.ボトムアップの革命としてのWeb3.0

 ブロックチェーンが普及すれば、Web2.0時代に主流となった中央集権型のビジネスモデルが変革する可能性が高くなります。ガーファのようなプラットフォームに依存する必要がなくなり、さまざまなビジネスモデルが変わることになるでしょう。  Web1.0で期待され、Web2.0で実現できなかった、真の情報の民主化がWeb3.0では実現できます。これは、Web3.0がWeb2.0を駆逐するということではありません。Web2.0からWeb3.0までの「2.○」の間を、ユーザーの意向に合わせて選択できるようになるという「選択の自由化」に相当するものです。Web2.0の世界が完全になくなるといったものではないのです。
 Web3.0を語る際、筆者の好きな対比構造を表す言葉として、「スーツVSコミュニティ」というものがあります。スーツがエリート、コミュニティがユーザーを指し、「権力者と民衆」の対比として使われる言葉です。Web3.0では「中央集権VS分散」「先行者VS後発の挑戦者」などの対比としても使われます。  スーツに支配された世界では、コミュニティは戦うすべを持ちませんでしたが、コミュニティは「分散」という武器を手にしました。スーツに悔しい思いをした経験のある人はたくさんおり、ブロックチェーンが持ち込んだ「分散」は、スーツに抑圧されてきたコミュニティに適合し、圧倒的な熱狂を生み出します。Web3.0は、この熱量を生み出すコミュニティの反撃の物語です。そしてWeb3.0は、今まで武器を持たなかったコミュニティがボトムアップから成し遂げる静かなる革命により、ゆっくりと確実に実現されるのです。
 
 
 

まとめ

  • 現在のWeb3.0 人口は1億人ほどで、インターネット人口の約10分の1
  • Web2.0 最大の過ちは、広告モデルをビジネスモデルとして採用したこと
  • Web3.0はコミュニティによるボトムアップの静かなる革命によって実現される
  • Web3.0 はWeb2.0 で企業に奪われたデータの主権を取り戻す戦いである
  • Web3.0はWeb2.0 を進化させようとする内圧と、社会的に抑圧された人々が求める社会正義の外圧によって推し進められる