概要

2021年にNFTは大いに盛り上がりましたが、2024年現在NFT取引量は激減し、99%減となりました。BTC価格(ビットコイン)は高騰しOrdinalsも盛り上がる中、新しいNFTブームが発生する機運を感じたため、国内上場企業やX上で話題になった事例を中心に調査を行いました。

※Ordinalsとは
ビットコインNFTを実現するプロジェクトのことです。

調査方法

期間を2020年1月〜2023年12月の中の上場企業約4000社のなかから

→PR TIMES企業ページから「NFT」で検索する結果を反映

→タイトルにNFTと入っているものを優先的にpick up 、メタバースが主であるものは除外

→その他、X上で話題に上がったものを独自にpick up 

調査結果

画像にもありますように、4000社のうち、NFT活用の企業は148社 割合でいうと、3.7%となりました。

そのうちの約半分がSUSHI TOP MARKETING株式会社との関連がある企業でした。

グラフから見てわかるように、販売から配布への移行が起きています。

なぜなのでしょうか?

それぞれの活用事例を見ながら、考えて行きましょう

NFT販売に関する事例

NFT販売取引量はピーク時の99%減してしまっています。その要因として、NFTを持っていても所有感を感じられる瞬間が少ない、ブームが過ぎ去り価格が下落してきているなどの理由が挙げられます。

NFTブームの火付け役となったNBA Top Shotもピーク時の売上の99%DOWNとなっており、栄枯盛衰を感じます。

NBA Top Shotの盛り上がりを受け、日本でもプロスポーツトレカは販売されたが、現時点ではほぼサービス終了しています。NBAが99%減になる中、日米の市場規模の差を考えると事業展開に足る売上を継続的に得るには二番煎じではより難しいことが感じ取れます。

→NBA Top ShotはNBAの最高の瞬間を動画トレカ化した「Moments」を集めるプラットフォームであり、ファンは公式ライセンスのデジタルグッズを収集することができるため、NBAファンにお気に入りの瞬間を購入、所有、販売する機会をファンに提供しています。

 

トレカ × NFTが相性が悪いのかと言われるとそうではないと思っておりまして、トレカ系NFTは一部ではまだ人気があり、最近ではfantasy.topが話題になっています。

→fantasy.topはトレーディングカード化されたインフルエンサーのカードを購入しデッキを組み、対戦できるようにしたゲームです。インフルエンサーの直近7日間のエンゲージメントによりカードの性能が変化するような設計になっており、2024年6月時点でかなり取引量が多いプロジェクトになっています。

 

 

NFT配布事例

XcopyのハエNFTをCoinbaseのBasechainにて、24時間限定/購入無制限のオーディション形式での販売が行われました。ハエNFTを1体2ドルで売り、約100万体約4億の売上が生まれた。

ハエNFTがCC0で二次利用が可能なため、二次創作作品が多数投稿されました、そこからコミュニティ手動でハエNFTをBURNしてトークンが発行され高騰しました。

(※ファンが勝手に作成したミームコンテンツ)

※XCOPYとは

→XCOPYはロンドンを拠点とするデジタルアーティストであり、現在、XCOPYの約2000作品の販売総額は、5910万ドルに上昇していると言われている。2021年11月には、もともと139ドルの価値で2018年に鋳造された『A Coin for the Ferryman』のNFT作品が、SuperRareで1,330ETH、つまり当時としては破格の600万ドルで落札された。

 

liquid Death✖️Coinbaseのコラボチェーン投票

かっこいい水「Liquid Death」のパッケージデザインを決めるオンチェーン投票を実施。合計16,5万体のNFTが発行されました。オンライン投票は不正が起こりやすいが、GAS代が掛かることで抑止力となっています。そのGAS代も今までは高かったが、Layer2技術の発展に伴い、安くなってきています。そのおかげで、マス向けのNFT施策を展開するインフラが整ってきたとも言えます。

 

SNS上でNFTを配布をしあう世界線「non-fungible like」の誕生

NFTの発行がNon-Fungible Like(like/RTの代わりにMINTする)

Xに近いタイムライン型SNS「warpcast」にて1〜2ドルの手数料は掛かるものの、Xでいいねを押す感覚でNFTを発行することができ、数多くFreeMintされている。応援の気持ちをNFT発行で表現しており、NFTが多く発行されるほどにクリエイターの収益に還元される。

8400個NFTが発行され、3,7ETHの収益になった事例も、、

※MINTとは、NFTを発行すること

販売から配布への移行に関する考察

グラフからもわかるように、Ethereum Layer2のDuncunアップデートによって、GAS代が99%も減少しました。これにより、大量に発行することが可能になり、マスに向けた大量配布施策が可能になりました。購入という少しハードルが高いところから、気づいたら、NFTを持っている。といったような状況を産むことができる。

今回の調査を終えて、のぶめいが思ったこと

今回の調査を終えて、マーケティング文脈でどのような変化があるかを考えるために、顧客が商品を知り、購入してからロイヤル化するまでの過程をダブルファネルの考え方に則って考えてみます。

ファネルの左側の顧客がまだ商品を認知していない領域でいうと、TVCMやPRなどのマス広告が効果的です。。

それに対して、右側の領域は購入後のデータが取得できるので、リピートを促したりやロイヤル化に進むために、メルマガを出したりとかプッシュ通知をすることでイベントの情報を送ったりするCRM活動を行うのが一般的です。。

 

2つの領域の真ん中がギザギザしていると思うのですが、広告の際に接触したデータとCRMの顧客データ間のデータ連携が中々難しい現状があるため、このような表現をしています。

その理由に、広告側とCRM側で使うツールや組織が異なり利用する顧客IDも異なるため、簡単に突合することが難しく、個人に紐づく情報も多いので、データはかなり溜まっていても、使えるデータが少ないという課題があります。

 

その課題に対して、NFTはピンポイントに「このフェネルのこのデータ」をデータで取得しやすく、広告側でNFTを配信してもらえれば、配信することで得られるウォレットアドレスをCRMに紐付けて運用するということは可能だと考えています。

これまでのNFTは右側CRM領域のロイヤリティ向上文脈で語られてきました。リピート購入や頻度を上げていくためにNFTを利用する話が多かったですが、この領域で継続的に売上が上がっている等の話を聞いたことがなく、スポット的にworkした話はあるものの、再現性が低い印象を受けます。

NFTを使う以前の問題として、そもそもCRMを運用できる人材がいない、UI/UX悪いなど別のところに原因があると感じています。。

イーサリアムのアップデートでGAS代が下がり、インフラが整ってきたことで、マス向けの広告展開にNFTを活用できる土壌が整ってきていると感じました。マス広告や既存の流通経路に載せたPR施策にNFTを活用することで、NFT所有者の母数を増やすことができますし、溜まったデータをCRMで活かすことも可能になります。。NFTやウォレットの知識が必要なく、簡単にNFTを配布できる環境が整うことで、「知らぬ間にNFTを持っていた」なんて状況を作り出せると考えています。

マス広告やPR施策に載せてNFTを配ることができれば、広告領域とCRM領域の間のギザギザだった部分が同じウォレットアドレスを通じて連携できる世界線が近い将来訪れるのではないかと考えています。

異なる組織間のデータを統合しようとすると、多大なコストが掛かります。お互いの情報システム担当の連携、個人情報を紐づけない形でクリーンルームの構築、IDの突合など、互いの情報を連携するのは非常に困難です。

その点、NFTの場合、個人情報などが紐つかず、「ロイヤリティの高い顧客」という情報だけをブロックチェーン上で証明できるので広告領域とCRM領域ののりしろとして、これまでかかってきたコストよりも低コストにデータ連携できると考えています。