スターバックスオデッセイ(Starbucks Odyssey)とは?

Starbucks Odysseyは2022年9月にスターバックスから発表されたNFTを利用したロイヤリティプログラムです。

Starbucks Odysseyの詳細については過去記事を参照ください。

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Starbucks Odysseyの施策結果

プロジェクトの発表から1年以上経ちましたので、NFTのマーケティング活用事例として文脈を掘っていければと思っています。

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1st Mover事例として日経などでも取り上げられたため、Web3について少し知っている人であれば知らない人がいない事例であり、勉強会などではよく「成功事例」として取り上げられておりますが、「本当に成功事例なのか?」を掘り下げます。

さて、本プロジェクトの効果を見てみましょう。

NFTを利用しているので、その売上や流通額をトークングラフから分析できるのがブロックチェーンの良いところです。

Starbucks OdysseyのNFTは2023年3〜8月にかけて4度販売され、注目を集め投機層の流入もあり毎回売れ行きは好調、総売上は2億円となりました。最初こそ、投機層参入による高値での二次流は見られましたが、回を追うごとに二次通額は激減、最終的には1割ほどに落ち着きました。この金額感の大小を他プロジェクトと比較すると、日本ではMEGAMIやNTPと同じ金額感となります。

参加者数では、Odysseyメンバーは最大でも2.5万人ほどと推測しています。

Starbucks Rewardsとのポイントの互換性はないものの、RewardsメンバーのみがOdysseyに参加できる設計になっていたため、Rewardsメンバー全体5,800万人中、Odysseyメンバーは最大でも全体の2,000分の1ほどかと思われます。

投機要素の薄い商材であったため、CloneXのようなPFP系NFTと比較すると金額感は劣りますが、実証実験であることを考えると、流通件数と金額から十分なデータが得られたのではと思われます。

202403_Starbucks Odyssey2販売方法もその都度変えており、どうやったらユーザーが購入しやすいのかの検証が行われている様子が伺えます。この学びを受けてスターバックスが次にどんな施策を展開してくるのか注目です。

結果考察

施策の展開を見ると、Starbucks Odysseyは箱庭でのNFT検証施策として展開されていたことがよくわかります。

ただ、RewardsメンバーのみがOdysseyに参加できる設計になっていたため、投機層の参入によりターゲットがズレた可能性があります。初期の無料配布NFTが10~20万円ほどの価格で転売されていることや、NFTのリスト率の高さやSNSでのファンの反応を見るに、Odysseyの参加者は投機層が大半を占めていたと推察します。

202403_Starbucks Odyssey3Odysseyのインセンティブに【毎日コーヒーが飲める権利】があるのですが、それを獲得するために有料NFTを購入すると、$400(約6万円)必要になってしまい、毎日スポットでコーヒー買ったほうがコスパが良くRewardsユーザーがあえてNFTを購入する理由は薄かった印象です。

【ポイント】Gas代の観点

NFTをロイヤリティプログラムとしてパブリックチェーン上で利用することを考えると、Gas代がネックになります。Ethereumではなく、Polygon上で実装されたことからもその観点を考慮していることがわかりますが、Rewardsメンバー5,800万人が利用することを考えると、NFTを1つ配布するだけでも掛かるGas代は以下のようになります。

  • Ethereum : 1NFT配布あたり 約1,000円 → 580億円
  • Polygon : 1NFT配布あたり 約30円 → 17億円
  • Astar   : 1NFT配布あたり 約0.01円 → 58万円
    ※NFT配布金額はSUSHI TOP社調べ ブロックチェーンの混み具合によって費用は変動
    ※Astarは中身のロジックが変更されGas代が上がったので現在は状況が異なります

202403_Starbucks Odyssey4Gas代が安いとされるPolygonですら、大企業が抱えるユーザー数で乗り込んでこられるとGas代だけで非常に大きなコストとなります。

では、Astarであれば良いのかというとそう単純な話でもなく、新しいチェーンには古参チェーンにある便利なツールやライブラリがありません。すべてを自分たちで作る必要があるためその分コストがかかる点がネックです。

Rewardsユーザーに既存ポイントよりも遥かに高い利便性を提供できる見込みが合ってそれがコストに見合うかの経営判断になります。

Layer2の技術などもありますが、コストが下がり、数百万件のNFT配布に耐えられる堅牢性があるのかについてはまだまだ未検証です。Gasコストが高い状況では、コーヒーのような低価格な商材よりも単価の高い高価格商材のほうがコストを飲み込みやすいのでブランド物などからNFT利用が進んでいくのではないでしょうか。

【ポイント】NFTマーケティングは2階建て

今回のStarbucks OdysseyではNFT = ポイントに近い即物的なインセンティブ訴求施策になっていました。あくまで、Rewardsの延長という形です。

ポイントのような定量的なインセンティブではなく、リリース当初に案内されていた【バーチャル農園への案内】といった定性的なインセンティブはこれから展開されるのかもしれませんが、今回未実装の認識です。

NFTの価値は定量価値だけではなく定性価値にもあると考えています。定性価値の検証が進んでいると非常に有意義だったと考えています。

NFTは定性情報、個人の興味関心やロイヤリティの可視化に向いている技術です。既存のポイントシステムに競合するものではなく、2階建てで共存共栄できる概念であると考えています。図で書くと次のようなイメージです。

202403_Starbucks Odyssey5現時点でインフラ的にNFTのポイント利用が難しいのは事実ですが、スキルの証明やコミュニティへの帰属意識を高める形(保有効果)でのNFT活用は様々な事例が登場してきています。

また、NFTは自社だけでなく、他社や異なるチャネルから発行されたNFTも分析に使用できる点が強みです。今後、メディアやIPに紐づいたNFTが配布される機会も増えるため、【スタバのバーチャルツアー参加者はこのテレビ番組見てる】ということが3次元的にわかるようになってきます。

例1)自社発行NFTにメディアデータを掛け合わせた分析
例2)XとInstagram両方の接触者に対しターゲット配信するなどの施策

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まとめ

本施策についての総評・所感をまとめると次のようになります。

売上観点

・施策を実施するコスト < 売上(2億円)、であると思われるので成功

■ブランディング観点

・1st Mover事例として様々な媒体で紹介されネットワーク効果⭕

・先進的な印象も付きブランディングの意味でも⭕

・投機層の流入もあったものの、元々のRewardユーザーは気づいてもいないはずなのでパイは広がっても、マイナス影響はないのではないか

■実証実験の観点

・クレカ決済、ウォレット機能などのUI/UXを実装し、販売ナレッジを貯められた点は⭕

・NFTの発行数を絞って販売したことで、Rewardsを利用する一般ユーザーではなく、投機層がターゲットになってしまったことで狙っていないターゲットが流入した可能性がある

・Gas代やインフラの観点からOdysseyをRewardsに展開していくのは厳しい

・既存ポイント施策の延長ではなく、定性的な活用方法の検証、特にNFTを所有・バーチャルツアー参加ユーザーの行動変容がわかるとより有意義であった

・2回目を実施するのであれば、IPコラボや企業間コラボなどの横展開の検証を進めたいので、しばらくはナレッジを握ったままインフラの進化と市場の理解度醸成を待つのが良いのではないか

SUSHITOPではNFT配布のサポートをしています

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また、Astar Network, Oasys, Polygonなど様々なブロックチェーンでNFTを配布することができます。

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