ブロックチェーン市場の市場規模と成長速度

 前節では、ブロックチェーンを「所有を証明」する技術と説明しました。ここではブロックチェーン市場がどれくらいの大きさで、どれくらいの速度で成長しているかを、定量的なデータから見ていきます。
 
 
1.ブロックチェーン市場の市場規模
 
ブロックチェーン市場と暗号資産の時価総額は近似
 まずブロックチェーン技術の普及のきっかけとなった、暗号資産の時価総額を見ていきましょう。暗号資産にはBTCやETHなどさまざまな種類がありますが、ブロックチェーン技術を使ったDeFiやNFTなどのサービスの大半がプロジェクト固有の暗号資産を発行しており、これらの暗号資産を合算した総額がブロックチェーン市場の時価総額、つまり現在の市場規模と見ることができます。時価総額の算出方法は株式と同じで、発行された暗号資産の単価と発行枚数を掛け合わせたものが時価総額となります。
 
 
 ブロックチェーンにはビットコインやイーサリアムなど、さまざまな種類がありますが、調べたいブロックチェーンの時価総額を見ることで、そのブロックチェーン上にどれくらいの「価値」が乗っているかを可視化できます。
 
 
ブロックチェーン市場の時価総額(2021年時点)
 最初の暗号資産であるBTCが2009年に誕生して以来、2020年末頃からBTCを筆頭に暗号資産の価格が急上昇します。著名な投資家や米国の上場企業(テスラやマイクロストラテジー、スクエア、ペイパル)の参入が上昇トレンドをつくり出したことで、2兆ドルの市場に成長し、ピーク時には3兆ドルに迫る勢いでした。

 暗号資産バブルといわれた2018年初頭のBTC価格が200万円、2021年末で600万円に到達しているので、当時と比較しても約3倍の規模に成長し、BTC単体での時価総額は1兆ドルほどになっています。
 
出典:CoinGecko「Yearly Report 2021 - 2021 年 現物マーケット概観」をもとに作成
 
 
 
2.BTCの時価総額を企業と比較
 
フェイスブックの時価総額を抜く市場規模
 「ブロックチェーン市場全体が2兆ドル、BTCが1兆ドル」と聞いても、桁が大きすぎて実感できないと思いますので、企業と比較してみます。BTCの時価総額を1兆ドルと考えたとき、時価総額が近い企業はアマゾンやテスラが該当します。GAFA(ガーファ)と呼ばれるビッグテックのうち、BTCはすでにフェイスブック(現メタ)を抜く規模に成長しています。BTCがバブルであるとすると、GAFAの時価総額もバブルということでしょうか。しかしBTCの時価総額は、もはや虚像ではなく、「価値」を持った新しい資産と認識すべき段階に来ているのです。
 
 
BTCと金(ゴールド)の比較
 ビットコインの仕組みについては次の記事で解説しますが、BTCは金(ゴールド)と性質が似ているとされています。金は地球上に存在する量が決まっており、毎年採掘される量にも物理的な限界がある「限りある資産」です。そのため、インフレのリスクヘッジ資産として世界中で取引されています。BTCも金と似た性質があり、地球上にある量は2,100万枚に固定され、毎年市場に供給される枚数も決まっています。このBTCの性質を指してデジタルゴールドと呼ばれているのです。
 
出典:HowMuch.net「Comparing Cryptocurrency Against the Entire World’s Wealth in
One Graph - Putting the World’ s Money into Perspective」をもとに作成
 
 
 性質は似ていますが、考え方によってBTCは金より優れた点が多々あり、金の上位互換と捉えることもできます。「金は有限」と説明しましたが、金の埋蔵量はあくまで推定です。地球上のすべての土地を掘り返すことは現実的に不可能なので確認できません。時折、金鉱脈が見つかったことがニュースになりますが、ビットコインにそういうことはありません。急に供給量が増える可能性のある金とBTC、どちらがインフレのリスクヘッジとして機能するかは自明でしょう。

 BTCが金に負けている点といえば、商品としての「信用」と「認知」と思われますが、これらは金が長い歴史のなかで積み上げてきたものです。ビットコインは誕生して10年余りしか経っていないので、この部分で負けるのは仕方ありません。ただし、ビットコインも金と同じ時の流れのなかにあるものなので、BTCに信用が積み上がらないと考えることは不自然です。
 
BTCの価格は2030年に100万ドルになる見込み
 アークインベストのレポートによると、1BTCの価格は2030年に100万ドルになると予測されています。また、市場規模で換算すると28兆ドルと予測されています。
 
出典:ARK Investment Management LLC「ARK Big Ideas 2022 (P.55) - The Price Of One
Bitcoin Could Exceed $1 Million by 2030」をもとに作成
 
 
 
 上図のレポートは「BTCが金(ゴールド)の市場を50%奪ったら市場規模は5兆ドル(黒色の部分)」といったように、BTCが活用できる市場で既存プレイヤーからどの程度の割合を奪えば、いくらの市場規模になるかを計算しています。そのため、BTCの用途とその市場で期待される成長性を見ることができます。
 
 
 
3.ブロックチェーン市場の成長速度
 
 市場の成長速度を知るために、状況が似ていたと思われるインターネットバブルと比較してみます。世の中に「インターネット」という言葉が普及したとき、暗号資産と同様、バブルのような状況になりました。当時は、インターネットが何かわからなくても、決算書に「インターネット」と書けば株価が上がるほどの状況になっていたようです。もちろん、中身のない価格の高騰はいずれはじけるので、適正な価値に戻ったことがグラフ(次図)からも読み取れます。そして、インターネット市場が堅実に成長し、バブル時の時価総額と同じ水準に戻るまでに15年の年月がかかっています。そして2015年頃には、グーグルやフェイスブック(現メタ)のような、GAFA(ガーファ)と呼ばれる現在のインターネットの勝ち組がプレイヤーとして存在していたことは記憶に新しいと思います。
 
出典:NDX 指数チャートをもとに作成
 
 
 インターネット市場での「バブルが発生し、GAFAが台頭し、バブル期の時価総額を超えるまでに15年」という事実に対して、ブロックチェーン市場を見てみましょう。バブルといわれた2018年初頭からバブル期の価格を超えるまでの年月はたった3年です。単純比較はできませんが、価格推移だけを見ると、ブロックチェーン市場の成長速度はインターネット市場の5倍速いともいえます。この数字により何となく肌感で技術進化の速さを感じられるでしょう。少なくともブロックチェーン市場でも、2030年にはGAFAにあたる勝者が現れているスピード感と推察します。企業の新規事業開発やスタートアップがこの市場への参入を考えているのであれば、まさに「今」が正念場の時期と思います。
 
 
 
 
 
まとめ
  • 暗号資産にはさまざまな種類があり、暗号資産の総額が市場規模となる
  • ブロックチェーン市場全体で時価総額は2兆ドル、BTC単体で1兆ドル
  • 金とBTCは似ているが、BTCに優れた点が多く、上位互換ともいえる
  • 1BTCの価格は2030年に100万ドルを超えるとするレポートもある
  • ブロックチェーン市場の成長速度はインターネット市場より5倍速い